2011/04/22

trust

あすもまた、同じ日が来るのだろう。
幸福は一生、来ないのだ。それは、わかっている。
けれども、きっと来る、あすは来る、と信じて寝るのがいいでしょう。
わざと、どさんと大きい音たててふとんにたおれる。
ああ、いい気持ちだ。
ふとんが冷たいので、背中がほどよくひんやりして、ついうっとりなる。
幸福は一夜おくれて来る。
ぼんやり、そんな言葉を思い出す。
幸福を待って待って、とうとう堪え切れずに家を飛び出してしまって、
そのあくる日に、すばらしい幸福の知らせが、捨てた家を訪れたが、もうおそかった。
幸福は一夜おくれて来る。幸福は、———


太宰治『女生徒』

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